染色堅牢度は、色の変化や色移りへの抵抗性を調べるもの
「染色堅牢度(せんしょくけんろうど)」とは、染色した布や繊維製品の色が、洗濯・摩擦・汗・光などの作用を受けたとき、どの程度変化したり、ほかのものへ移ったりするかを評価する指標です。ここでいう「堅ろう」は、丈夫さや抵抗性を意味します。
染色堅牢度は、色が変わるかどうかだけを見るものではありません。試験によっては、染めた布の色の変化(変退色)と、染料などが別の布へ移る汚染(色移り)を分けて評価します。どの試験を行うかによって、調べる作用も判定する項目も異なります。
「変退色」と「汚染」は別の評価
変退色は、試験の前後で色相・明るさ・鮮やかさがどう変わったかを見ます。色あせだけでなく、色みが変わる場合も含まれます。汚染は、染料などが添付した白布へ移った程度を調べる評価です。洗濯後に元の衣類が少し色あせることと、一緒に洗った淡色の衣類へ色が付くことは、関連していても別の結果として判定されます。
そのため「堅牢度が低い」と聞いても、どの試験の、どの項目が低かったのかを確認する必要があります。洗濯による変退色が良好でも、摩擦で白い布に色が付くことはあり得ます。
試験の種類ごとに、確認する色のトラブルが違う
| 試験の例 | 主に確認すること | 身近な場面の例 |
|---|---|---|
| 洗濯堅牢度 | 洗濯による変退色と、ほかの布への汚染 | 洗濯後の色あせや、同時に洗った衣類への色移り |
| 摩擦堅牢度 | 乾燥または湿潤した白布への色移り | 濃色の衣類が、擦れた淡色の衣類やバッグに色を付ける |
| 汗堅牢度 | 汗を想定した処理による変退色や汚染 | 汗をかきやすい部分の変色、接触した布への色移り |
| 耐光堅牢度 | 光を受けた部分の変退色 | 日光や照明に当たる部分の色あせ |
このほか、水、ドライクリーニング、塩素などを対象にした試験もあります。何を調べるべきかは、製品の用途や想定する着用・保管環境によって変わります。
洗濯や摩擦の試験は、条件を決めて評価する
洗濯堅牢度試験では、試験片に添付白布を組み合わせ、規定の洗濯液・温度・時間などで処理した後、試験片の変退色と白布への汚染を判定します。一般財団法人カケンテストセンターが紹介するJIS L 0844の方法では、家庭用洗濯機ではなく試験専用の機器を用いる方法が示されています。家庭での洗濯結果をそのまま再現するというより、決められた条件で比較できるようにした試験です。
摩擦堅牢度試験では、試験片を乾いた白布、または水で湿らせた白布でこすり、白布にどの程度色が付いたかを判定します。ここで中心になるのは、試験片自身がどれだけ色あせたかではなく、摩擦によって白布へ移った色です。乾燥時と、汗・雨などで湿った状態の色移りに差が出る場合があるため、乾燥試験と湿潤試験を分けて確認します。
「4級」などの数字は、試験条件とセットで見る
視感法では、試験前後の布や白布をグレースケールと比べて等級を判定します。一般的な等級は5級から1級までで、数値が大きいほど変化や汚染が少ないことを示します。試験方法によっては中間の等級も使われます。
ただし、「4級ならどんな使い方でも色落ちしない」という意味ではありません。洗濯、摩擦、汗、光など、どの作用をどの条件で試験したかが重要です。試験報告書を見るときは、結果の数字だけでなく、試験方法、乾燥・湿潤の別、変退色と汚染のどちらを評価したかを合わせて確認してください。製品の品質基準や用途によって、求められる等級も異なります。
着物や衣類の色トラブルは、堅牢度の数字だけでは判断できない
試験結果は、定められた条件で試料を評価したものです。実際の衣類では、繊維の種類、染料や顔料、仕上げ加工、経年変化、保管状態、濡れ方や摩擦の強さなどが重なります。そのため、試験結果だけから、目の前の着物や衣類に起きた色の変化の原因や、補正できる範囲を一律に決めることはできません。
濃い色が濡れた状態で淡い部分へ移った「色泣き」は、摩擦による色移りや、別の衣類から移染した状態と見た目が似ることがあります。原因を取り違えると処置も変わるため、まず布の状態と色の動きを確認します。色泣きの仕組みは色泣きの原因と補正の考え方で、染料と顔料の定着の違いは染料と顔料の違いで解説しています。
色移りが心配でも、目立たない場所を強くこすったり、濡らした布で何度も試したりするのは避けてください。色がさらに動いたり、生地の風合いを損ねたりすることがあります。特に着物や大切な衣類は、素材・仕立て・加工も含めて状態を確認することが大切です。
まとめ
染色堅牢度は、洗濯・摩擦・汗・光などの作用による色の変化や、ほかの布への色移りを試験条件に沿って評価するものです。等級は数値が大きいほど良好ですが、数字だけで実際の使い方や補正の可否まで決まるわけではありません。試験項目と条件を確かめたうえで、実物の素材や加工、色の動きを合わせて見ることが必要です。
